「難病・発達障害・高次脳機能障害のある方の就労支援セミナー」開催に際して
熊本IBD 中山 泰男
 2010年2月15日(月) 熊本県民会館パレア9階にて、「難病・発達障害・高次脳機能障害のある方の就労支援セミナー」が開催され、当事者・家族、専門家、支援者ら約90名が参加した。
 これは、厚生労働省平成21年度障害者保健福祉推進事業として、NPO法人おーさぁ(熊本市)の事務局責任者を務める中山氏(熊本IBD会長)を中心に企画されたもの。
 難病患者は、面接時に病名を告げれば不採用となる恐れから、一般の求職者として就職してしまうケースが多い。しかし、実際には無理をしたため重症化させてしまったり、入退院を繰り返したりで、退職に追い込まれることもある。

 今回、事業者側がどの程度、難病を理解しているのか、また、就職に際しての偏見があるのかを全国1000社の事業主に対し、就労に関する意識調査を行った。結果は、回収率24.4%。
 障害者基本法は、身体障害、知的障害及び精神障害にある方を対象とする法律であり、 難病は規定されていない。また、障害者雇用促進法では、上記の三障害者以外の難病・発達障害・高次脳機能障害を「その他障害者」として、職業リハビリテーションの支援の対象とされているが実態的な効果はあまり上がっていない。


 そういう立場で、「その他障害者」というくくりは、全国初は取り組みであった。制度の谷間に置かれたもの同士、障害特性の違いはあっても私たちの生活に支障があることは間違いなくその点に絞ってのコラボ開催は、国も大きな関心をしめしたようだ
 今回のアンケート調査結果やセミナー発言記録、訪問調査記録などを取りまとめ3月末に国へ提出される。事務局では、部数は余計目に印刷する予定であるので、希望者には配布を行うとのこと。熊本IBD読者については、事務局の長廣まで申し込んでください。

熊本「その他障害」就労セミナーに参加して
北海道IBD 萩原英司
 みなさん、こんにちは。遠く離れた北海道から今回のセミナーに参加させていただきました。私の所属する北海道IBDは今年創立20周年を迎え、この4月18日に就労をテーマとした公開セミナーを行います。その参考にするためと、講師としてお招きする中山さんから知恵を頂くためでした。
前日夜、中山さんに熊本空港まで迎えに来ていただき、車中から猛レッスンが始まりました。レッスンは長廣さんと美味しいお酒、たこ焼きも交え深夜まで及びました。さすが熊本は人材もすごいですね。
さて当日、会場設営からおじゃまし、「おーさぁ」の方々のきびきびした動き、適確なチェックを入れる中山さんを写真に納めました。
 基調講演やパネラーの発言は私の付け刃知識では良く判りませんでしたが、皆さんの深い苦労と熱い思いを感じました。何よりこれだけ多様なメンバーが一同に会する機会を設けられたことと、「その他障害者」に関する企業の認識調査結果が明らかになったのは大きな成果に結びつくのではないでしょうか。
北海道でも就労支援にご努力頂いている組織、個人もいらっしゃいます。4月のイベントで、多くの人々のつながりを作るヒントと元気を頂いて深夜の札幌に帰着しました。

佐賀IBD縁笑会  秀島晴美
 今回熊本での就労支援セミナーお疲れ様でした。様々な立場の方のお話を聞き、考えさせられることも多く、とても充実した内容のセミナーでした。
 その中でも、中山代表の企業へのアンケート報告は、私たち当事者が思っているよりも、企業側トップは障がいや疾患がある者の雇用に対して柔軟な考えを持っているという結果に、とても勇気付けられる思いがしました。考えてみれば、私自身も24年前潰瘍性大腸炎という診断がおりた時点で就労をあきらめていたことを思い出しました。その後、なんとか自分が仕事をやってこれたのは単に運が良かったのだと考えがちでしたが、そうではないことを知りました。「日本の企業も捨てたもんじゃない」との中山さんの言葉に同感し、あきらめてはいけないとの思いを強くしました。
 また、それを実践しているダイキンサンライズ摂津の應武さんのお話しはとても印象深いものでした。工場の従業員の大半がさまざまな障がい(肢体不自由、聴力障害、知的障害、自閉症、精神障害など)を持つ方々であり、それぞれができることを考えて職場配置されているというだけでなく、個別の対応も行われていることは驚きでした。仕事に生きがいを持って働く方の気持ちまでもが伝わってくるようでした。お話しを聞きながら、「働く」ことには健常者と障がい者の境界はないように感じられ、「共生」という言葉が脳裏に浮かびました。これからの福祉を考えていく上での方向性や可能性を示唆している事例であると思いました。
 障がいや疾患を持つ者の就労に関する課題はたくさんありますが、多くの方とともに考え実践していく先に、必ず未来は拓けていくことを確信することのできた一日でした。ありがとうございました。